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神戸地方裁判所 昭和58年(わ)813号 判決

本店所在地

神戸市中央区浜辺通六丁目二番二〇号

ジャパン・マーチャンダイス株式会社

(右代表者代表取締役三宅政和)

本籍

神戸市兵庫区荒田町三丁目一八〇番地の一二六

住居

神戸市中央区葺合町字蝉山一番地の七

会社役員

三宅政和

昭和一〇年一月一日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官村山博俊出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告法人ジャパン・マーチャンダイス株式会社を罰金三、五〇〇万円に、被告人三宅政和を懲役一年六月に各処する。

被告人三宅政和に対しこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人ジャパン・マーチャンダイス株式会社は、神戸市中央区浜辺通六丁目二番二〇号に本店を置き、雑貨の輸出業を営むもの、被告人三宅政和は、同会社の代表取締役として業務全般を統轄しているものであるが、被告人三宅は、被告法人の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における所得金額が二億二、一九五万二、七五〇円で、これに対する法人税額が八、五七八万八〇〇円であるにもかかわらず、架空の代理店手数料及び海上運賃を計上するなどの行為によりその所得の一部を秘匿した上、同五五年一〇月三一日、神戸市中央区中山手通三丁目七番三一号所在の所轄神戸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七、一二〇万五、七二二円で、これに対する法人税額が二、五四八万七、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税六、〇二九万三、四〇〇円を免れ、

第二  同五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における所得金額が四億五、九八〇万九、三七八円で、これに対する法人税額が一億八、七九一万一、三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為によりその所得金額の一部を秘匿した上、同五六年一〇月三一日、前記神戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億八、九〇七万五、八九一円で、これに対する法人税額が七、四二〇万五、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税一億一、三七〇万六、三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一八通

一  栗林富弘、三宅照子、渡辺利治、野上修三(二通)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書二通、証明書二通、査察官調査書一六通

一  商業登記簿謄本

なお、弁護人は、「(1)昭和五六年八月期において同年一二月の賞与を損金計上したが、それは他の役員の誤った教示に基づき合法的に損金に計上しうると信じて処理したもので、不正に税を免れる意図で架空の賞与を計上したものではない。(2)各種準備金の損金計上については、確定申告時において被告会社は青色申告の承認を得た状態にあり、適法に損金計上をしたものであるから、後に青色申告の承認を取消されても、故意に損金に計上して税を免れたとはいえない。」と主張する。

しかしながら、右(1)については、前掲各証拠によれば、被告人は、昭和五六年八月期において、同年一二月に支払う予定のボーナスを既に支払ったように架空の経理処理をし、同期の所得を過少に申告していることを認識していたことが認められるから、ほ税の故意が認められるのは当然である。また、(2)の主張は、最高裁判所昭和四九年九月二〇日判決、刑集二八巻六号二九一頁の判旨に徴し採用することができない。

(法令の適用)

一判示各所為(被告会社)第一につき昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条第二につき法人税法一六四条一項、一五九条

(被告人)第一につき昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一五九条

第二につき法人税法一五九条

一刑種の選択(被告人)懲役刑

一併合罪加重(被告会社)刑法四五条前段、四八条二項

(被告人)同法四五条前段、四七条本文、一〇条(第二の罪の刑に加重)

一執行猶予(被告人)同法二五条一項

(裁判官 清田賢)

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